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第8回通常総会後 |
〔解釈〕孔子の故郷・魯の国の隣国・衛の大夫(首相格)の 伯玉さんが、孔子の所へ使いをさし向けた。迎えた孔子は、その使者と寛いで対坐し「昨今あなたのご主人はどのようにお過ごしでしょうか?」と尋ね、使者は「主人はひたすら自分の過ちを少なくしようくと努力しておりますが、なかなかそう思うようにいかないで困っているようでございます」と答えた。使者が帰られたあとで孔子は「大した使者だなあ、立派な使者だなあ」とほめられた。
中国南宋の時代に出た大儒者・朱熹(朱晦庵)の友人の劉子澄が著した文章に朱熹が手を加えて出来たといわれる『小学』という書物があるが、その冒頭に灑掃(掃除)応對(人との応對)進退の節(出入りの時の作法)などの基本の心得が説かれている。この章は応對についてのその模範を示した例であるが、使者は自分の主人のことを謙虚に謙虚に語りつつも、暗に人柄の立派さを示しているのである。
以前当会で孔子第七十六代の傍系で上海ご在中の孔令朋先生をお招きし成人教学研修所にお越しいただいたことがあるが、その先生の立居振る舞い・応對・進退の節こそ正に見本をお示し下さっていたと回顧してやまないのである。ご子息は日本でご活躍中であるがあんなお方とお遇いできた幸運と有難さを今さらにかみしめているところである。
日本には武道をはじめ書道・茶道・花道などいろいろの礼法の習練法またその習練道場が各所にあるが、これこそ日本人の忘れてはならぬ世界に誇るべき慣習であり宝である。真の国際人となり世界の人々から敬迎されるに足る人材の育成は先ず礼を身につけることから始めねばならぬ。
論語普及会会長 村下 好伴 |