孔子と諸先生方に導かれて(第四回) 論語との出会い 本会理事 宮武清寛
 体験入塾で天分塾を訪れたのは平成十四年の二月十四日です。講師は柴田久美子先生でした。当時私は、西宮えびす読書会という森信三先生の「修身教授録」輪読会に参加していました。そこで、寺田先生に「宮武さん、論語もいいけどね、私が顧問をしている天分塾というのがあるんだけど来てみない」と誘って頂いたのがきっかけです。「自分が探しているものが見つかるんではないか」そんな予感がしました。
 私は五十歳にして「天命を知る」と宣言し会社を辞めて二年が経っていました。でも、新しいスタートも切らず、ふらふらしていた訳です。起業元年と公言しながらも先送りする日々が続いていました。
 八月比叡山での一泊研修で、坂田道信先生の話を伺い、複写ハガキ実習で自分自身へのハガキを書きました。「何をぐずぐずしているんですか、やると決めてから二年が過ぎていますね。皆を信じ、自分を信じて立ち上がる道しか残されていません。自分を信じ頑張って下さい。…」私は涙が出て止まりませんでした。自分では住環境を整備する会社を立ち上げようと決意しているはずなのに、具体的な行動を起こしていない、そんな自分自身に腹立たしかった。でも、やはり迷っていました。これでいいのか。残りの人生を賭ける仕事なのか。こんな事を本当にやりたかったのか。考えれば考える程、焦れば焦る程迷路に入っていく、そんな気がしていました。
 前が少し見え出したのが十一月の山本正夫先生の講演です。「苦暦」今与えられた事を一生懸命続けて行く。今の行き詰まりや苦労が天分に気付かせる、天分を育てるのです。先生の言葉が響きました。「運命を愛して生かす」「難有り有り難し」その言葉をじっとかみ締めました。
 そして、十二月上甲晃先生、先生は天職は一生かかって創っていくものだと言っておられます。今やっている仕事を好きになる事。そして、好きになるには志を立てる事が大事だと。仕事を通じて人を喜ばせたいと。松下幸之助さんは神様が喜ばれる仕事をしなくてはならないともおっしゃっていたそうです。私も住環境を整備するという仕事を通して、お客さまから感謝して頂ける会社にするんだと強く思えるようになりました。
 二月には、二度目の柴田久美子先生のお話を聞きながら考えました。マザーだ。気配り、気遣い、心配り。「母」の愛を持って仕事をする事なんだ。私達は経済成長の中お互いが競争し、事業の拡大・多角化という闘争の時代を生きるあまり神経をすり減らし疲れ果てています。もはや、大量生産・大量破壊の「男」の時代は終わった。これからは「母」の如く、少ない命(商品・サービス)を産み落とし(創造)、成長するまで、愛情を込めて丁寧に育て上げる。そして、お客さまから感謝して頂ける、そんな仕事をしよう。「コンセプト・イズ・マザー」です。
 まだまだ、天分・使命が明確になったと胸を張って言える状態ではありませんが、自分の信じた道を勇気を持って進む。その決意は出来ました。私にとって貴重な一年になったと確信しています。そしてそれから十二年、天分塾の志を継承する人間学塾中ノ島が今四期目です。そこで私は今副代表として運営に携わっています。

Copyright:(C) 2012 Rongo-Fukyukai. All Rights Reserved.