今月の論語 (2025年2月)
衆悪衆好(しゅうおしゅうこう)

子(し)曰(のたま)わく、
衆(しゅう)之(これ)を惡(にく)むも必ず察(さっ)し、
衆之を好(この)むも必ず察す。
子曰、衆惡之必察焉、衆好之必察焉。
(衛霊公第十五、仮名論語二三九頁)


〔注釈〕先師が言われた。「多くの者が悪んでも、必ず自分で観察して確かめる。多くの者が好んでも自分でよく観察して確かめることが大事だ」

〔和歌〕子はのらす 衆(しゆう)惡(にく)むとも 察(さつ)し見よ 衆(しゆう)好(この)むとも つねに察(さつ)せよ   (見尾勝馬)


今月の論語 会長 目黒泰禪

  SNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)が広がり始めたのは二十年位前からであろうか。SNSはX(旧ツイッター)やフェイスブック、LINE、インスタグラムやユーチューブなどのインターネット上のコミュニティサイト(交流の場)のことで、スマホとの組み合せで爆発的に拡大したのはわずかこの十年ほどである。

 一方、我々の世代に馴染みのあるマスメディア(大衆媒体)は、新聞、雑誌、ラジオとテレビで、そのテレビ誕生からは約七十年。我々は小さい頃、「テレビを見すぎると馬鹿になる」と親によく𠮟られたものである。今の子供たちもスマホでSNSに夢中になっていると、親から同じことを言われているかもしれない。

 ただ、マスメディアは購読もしくはスイッチを入れると流れてくる情報なので、購読しないスイッチを切るで、断ちやすい。しかしSNSは「いいね!」や「ツイートする(つぶやく)」から始まり、双方向に返信もしくは投稿、写真や動画を手軽に共有でき、しかもスマホで簡単にやりとりできる情報のため、かえって断ちがたい。SNSには利用者の興味にそう情報を選んで届け、やりとりを膨らませるアルゴリズム(情報処理の演算手順)が土台にあるため、ついついその情報を見てしまう。加えてチャットGPT等の生成AIの出現で、膨大な量の情報から瞬時に自分の欲しい情報だけをとれる。ますます断ちがたくなる。

 人間は同じ情報に繰り返し接していると、その情報が真実に思える「真理の錯誤」をおこす。インターネットやSNSは自由な言論空間を作ろうとしたことにより、偽情報も、誹謗中傷も拡散する。米国大統領選において既に指摘されているが、SNSは選挙でも重大な影響と結果をもたらす。日本でも昨年の都知事選での石丸伸二氏、衆院選での国民民主党の善戦、兵庫県知事選でもパワハラ疑惑で失職した斎藤元彦氏が再選した。

 孔子は言われる。「多くの人々が憎んでも、そのまま鵜呑みにせず、必ず自分で十分に観察して確かめる。また多くの人々が好んでも、必ず自分でよく観察して確かめる、それが大事だ」と。哲学者で元大阪大学総長・鷲田清一名誉教授も日経の『再考学び舎』の欄で、違和感のセンスを磨けと答えている。「この違和感があれば、世界の現実について、みなが『当たり前』と考えることに、はたしてそうかと問い返していける」と。SNSとマスメディアで真逆な情報が流れ、真実と虚偽の区別がつかないほど情報があふれる今日、「衆悪衆好(しゅうおしゅうこう)」を確かめる違和感のセンスをもちたいものである。

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