今月の論語 (2025年1月)
五十学易(ごじゅうがくえき)

子(し)曰(のたま)わく、
我(われ)に數年(すうねん)加え、
五十(ごじゅう)にして以(もっ)て
易(えき)を學(まな)べば、
以て大過(たいか)無かるべし。

子曰、加我數年、五十以學易、可以無大過。
(述而第七、仮名論語八六・八七頁)


〔注釈〕先師が言われた。「自分に数年を加えて五十になる頃までに易を学べば、大きな過はなくなるだろう」

〔和歌〕今しばし 生きながらへて 易讀まば 過あらむや 大過なからむ 
(見尾勝馬)


今月の論語 会長 目黒泰禪

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。旧年中のご仁援に深く感謝致しますと共に、皆様の一層のご健安をお祈り申し上げます。

 孔子が「もう数年生きて、五十歳までに易を学び得たら、私は大きな過ちを犯すことはないだろう」と言われた。孔子の五十代は、魯公に仕えて市長から法務大臣、首相補佐へと重用されたが、隣国の干渉によって失脚し、諸国を巡るという激動の年代であった。この章句は五十歳前に言われた言葉ではなく、晩年に人生を省みて、五十までに易経を学んでおくべきであったと後悔された言葉ではないだろうか。

 『論語の友』編集長である山本正進先生の「易経講座」は、開講してから十二年目に入った。講義は公田連太郎『易経講話』を、引用文献の補足資料で詳しく解説される。公田は「周易の思想では、成るべくは易姓革命で無く、長子即ち皇太子が相続なさることが最も善いと言うのである」(「震為雷」の章)と言う。公田の師である根本通明は「乾の卦は以て天子一姓の象(かたち)を示す。蠱(こ)の卦は以て父子相続の義を示す」「万世一系は是れ天の道なり」(『讀易私記』より)と明確に言いきる。

 ポール・リシャール(仏、哲学詩人)は日本を「建国以来、一系の天皇、永遠に亘る一人の天皇を奉戴せる唯一の民よ」(『日本の児等に』より)と謳い上げる。革命の周王朝に生き、易経を学んだ孔子が、日本の万世一系の国体を見たならば、必ずや敬嘆されるに違いない。

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