今月の論語 (2024年11月)
不思不学(ふしふがく)

子(し)曰(のたま)わく、
學(まな)びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)く、
思うて學(まな)ばざれば則ち殆(あやう)し。

子曰、學而不思則罔、思而不學則殆。
(為政第二、仮名論語一七頁)


〔注釈〕先師が言われた。「学ぶだけで深く考えなければ、本当の意味はわからない。考えるのみで学ばなければ、独断におちいって危ない」

〔和歌〕學ぶとも 思はざりせば 道くらし 學ばず思ふ 道のあやふさ
(見尾勝馬)

今月の論語 会長 目黒泰禪

  当会からの一般寄附金のお願いに際し、多くの会員皆様からお応えを賜りまして、心より厚く御礼申し上げます。ご寄附戴きましたご仁援をもとに、次の世代への普及活動に活用させて頂きます。人として為さざるべきこと為すべきことを、『論語』を通してしっかりと伝えて参りたいと存じます。今後とも宜しくご支援ご鞭撻の程お願い申し上げます。
 
 村下好伴先生は平成七年正月号から「今月のことば」を書き始められた。平成十八年二月号からは巻頭言として二頁目を飾るようになった。二十一年間休まず、体調を崩されて筆が執れなくなるまで書かれた。平成二十八年六月号からは先生のご指示で私が担当するようになった。その間、回復時に二回書かれているので、先生の「今月のことば」は二四九回に上る。令和三年正月号から題を「今月の論語」と改めた。その折に題字の「今月之論語」の揮毫を至聖孔子七十九代直裔孫・孔垂長先生から賜ったことは、真に光栄至極であった。

 三四九回目となる今月は、孔子の言われた「學(まな)びて思(おも)わざれば則(すなわ)ち罔(くら)く、思(おも)うて學(まな)ばざれば則(すなわ)ち殆(あやう)し」(為政篇)を噛みしめたい。確かに、学びて思わざれば本当の意味は分からないし、思うて学ばざれば独断におちいって危うい。幾つになっても「学びて思い、思うて学ぶ」ことを忘れずに歩みたいものである。近年、SNSや生成AIの活用で、読書する時間も辞書を引く時間も極端に少なくなっていないだろうか。便利なスマホでの検索や送られてくる情報だけでは、孔子の指摘された「不思不学」に近いのではないだろうか。先生はどう思われるであろう。

 余談ではあるが、『論語』を読んでいると「不」の字が多く、学而篇の四九三文字中には二〇回。勿論、人としての生き方を説くのであるから、「不」のつく戒めの言葉が多いのは当然かもしれない。因みに、仏典の『般若心経』の「無」の字を数えてみると、二七六文字のうちにも二〇回。儒教と仏教の相違が、「不」と「無」の文字に凝縮されているようで実に興味深い。

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