今月のことば (2018年1月)
百物生焉(ひゃくぶつしょうえん)

子曰、天何言哉、四時行焉百物生焉、天何言哉。
(陽貨第十七、仮名論語二七三頁)
〔注釈〕先師が言われた。「天は何を言うだろうか。春夏秋冬の四季はめぐっているし、万物は自ら生長しているではないか。天は何を言うだろうか。」

 新春を迎え、佳い年でありますようにお祈り致します。昨年中、本会に賜りました御厚情に対して心より御礼申し上げます。本年も変わらぬ御指導、御鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。
 歳を重ねると、天の運行の律動(リズム)に近くなるように感じる。太陽が昇ろうとすると目が覚め、沈もうとするとお腹が空き、満ちると眠くなる。若き日の、朝はいつまでも眠く、夜は何時までも起きていたかった、あれは何であったのであろう。
 初日の出に手を合わせた。「天は何も言わない。しかし四季は巡り、万物は生成する」と『論語』にあるが、全五〇〇章の中で、四季のめぐりが春夏秋冬の漢字で出てくるのは春の、それも一章句だけである。
「莫春(ぼしゅん)には春服(しゅんぷく)既(すで)に成(な)り、冠者(かんじゃ)五六人(ごろくにん)、童子(どうし)六七人(ろくしちにん)、沂(き)に浴(よく)し、舞雩(ぶう)に風(ふう)し、詠(えい)じて歸(かえ)らん」(先進篇、一五八頁)と、弟子の曾晢(そうせつ)が自分の思いを孔子に述べた章句だけである。夏、秋、冬の文字は出てこない。勿論、夏王朝や弟子の子夏等の名前は別である。冬の「歳(とし)寒(さむ)くして、然(しか)る後(のち)に松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後(おく)るるを知(し)るなり」(子罕篇、一二四頁)という表現はあるが、冬の漢字そのものは登場しない。『論語』には、自然に対して畏敬の念を抱き自然から学ぶという、人間の驕りを戒める章句は少ない。四季のうつろいが鮮明な日本と、乾燥した大地の中原との違いであろうか。
 中近東やアフリカへのプラント輸出に関わっていた当時、工場操業の実習で初めて日本にきた技術者の「私たちの神は不公平ではないだろうか。こんなに緑と水の豊かな国が存在しているというのに」、との一言が忘れられない。この日本の四季の巡りと自然の豊かさに感謝したい。

 子はのらす 天語らずも 四時(しじ)動き よろづものみな よみがへりつと
       (見尾勝馬『和歌論語』)

会長 目黒 泰禪


謹賀新年

  会 長 目黒泰禪
  副会長 室屋安宏 池田弘満 
  理 事 青木順子 安齋 幸 乾 進一 岡野 護 小木曽光一 川西勝久 
       岸本康義 進藤良孝 竹中栄二 辻田充司 野﨑眞夫 松井 裕 宮武清寛 森田達雄 
  監 事 淡路修身 山本正進
  相談役 村下好伴
  顧問 寺井種伯 石川忠久 長谷川健二 田久昌次郎 三木英一 井上象英

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