今月のことば (2016年5月)
孔子曰わく、命を知らざれば、以て君子たること無きなり。禮を知らざれば、以て立つこと無きなり。言を知らざれば、以て人を知ること無きなり。(堯曰第二十)
孔子曰、不知命、無以為君子也。不知禮、無以立也。不知言、無以知人也。(堯曰第二十・仮名論語三一三頁)
 
〔注釈〕天命を知らなければ、君子たる資格がない。礼を知らなければ、世に立つことができない。言葉を知らなければ、人を知ることができない。

 君子の君子たるゆえんは、天命を知り、禮を知り、言を知るに存する。天の偉大な力が、万物を創造し、それにそうあるべき道理を与えている。この三つを知ってこそ、万物の霊長たる人の人たる所以を知ることになる。
 このことをはっきり自覚してこそ、真の君子人と言える。
 人間も所詮動物の一員であるが、他の動物は優勝劣敗で、己の存在、己の欲望を満たさんためには他を貶めてでも得ようとする。そこには禮は存在しない。
 東日本大震災の後に見たような、他人の苦しみ・悲しみを見るに忍びず、我を忘れて他を助けようとする仁の精神こそ、人が人たる価値を有する。それでこそ他の動物たちには与えられなかった言語を、唯一与えられた人間としての価値が存する。言を知らざれば文字通り人を知ること無きなりである。

論語普及会会長 村下 好伴

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