今月のことば (2015年11月)
孔子曰わく、益者三友、損者三友、直きを友とし、
諒を友とし、多聞を友とするは、益なり。便辟を友とし、
善柔を友とし、便佞を友とするは、損なり。(季氏第十六)
孔子曰、益者三友、損者三友、友直、友諒、友多聞、益矣。
友便辟、友善柔、友便佞、損矣。
(季氏第十六・仮名論語二五一頁)
 
【注釈】孔先生が言われた。交わって有益な友に三種類がある。また、交わって損をする友にも三種類がある。素直で正直な人を友とし、誠実な人を友とし、知識見聞の豊かな人を友とするのは、有益である。体裁ぶる人、人ざわりは良いが誠実味のない人、口先ばかりで調子の良い人を友とするのは損だ。

 人生において友を有することは、なんと潤いある生き方であろう。悲しい時には慰め合い、苦しい時には励まし合い、楽しい時・幸せな時は喜びを分かち合える。こんな友が職場の身近かに居てくれたならばなんと豊かな人生であろう。
 しかし、その友も、相手により人生に有益な友と、一生を台無しにしてしまう友もある。吉田松陰の〝士規七則”の中の一節に、
 徳を成し材を達するには、師の恩、友の益多きに居る。故に君子は交遊を慎む。
とあるように、正に友も益友をえらばねばならない。
 また、孟子も、弟子の万章が友について問うた時に、 
 本当の友とは、年令や身分や血筋などに捉われること無く、その人の徳をこそ友とすべきである。
と説いている。つまり利交に陥ることなく素交でなければ真の交友とは云えない、と云っている。
 王陽明は、
 天下悉く信じて多しとなさず、一人これを信ずるのみにして少なしとなざず
とある。論語顔淵篇には、
 子貢友を問う。子曰わく、忠告して之を善道し、不可なれば則ち止む。自ら辱めらるること毌れ。
と断じている。
 古典には凡ゆるところに交友についての心がけ、心がまえの述べられた個所がちりばめられている。友は人生の重要な栄養源である。しかし択ばねば毒ともなる。
 肝胆相照らす
  天下と共に秋月を分たんと欲す。
 意気相許す
  天下と共に春風に坐せんと欲す。

のような温しやなかるべからずだ。

論語普及会会長 村下 好伴

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