今月のことば (2015年2月)
子曰、興於詩、立於禮、成於樂。
(泰伯第八・仮名論語一〇三頁)
〔注釈〕孔子日う、詩によってふるい立ち、礼によって安定し、楽によって人間を完成する。

 早や二月、〝二月は逃げる"の諺どうり二日ほど少ないにせよ、早く過ぎ去る思いがする。正月の浮かれ気分を拂いのけ、本当の意味での今年一年の出発点のような気もする。
 
 庭の木々も春の到来に満を持して芽を膨らませてきている。
 
 餌をまいておとづれを待つ初雀 庭の片隅に目をやると照り葉の茂みの奥にひっそりと椿が咲いている。
 最近はこんな風情の女性に出遭うことがとんと少なくなった。むしろ店頭に並ぶ洋花たちのように、これでもかこれでもかと自己主張して闊歩する女性たちがやたらと目を引く。これも戦後の欧米ナイズの一現象か。なにを時代遅れな…。と罵られそうだが、歳もここまで来ると焼くまで改まらぬようだ。
 年初来事件事故もなく、佳き新年と思っていたが、パリで銃撃事件がおきていた。
 憎しみ憎悪は、人間社会がここまで進歩向上して来たのに、本質はなにも変っていないことをまざまざと見せつけられた思いがする。
 孔子は隣国、衛の君主靈公から、強固な戦陣の建て方について問われた時「私はお祭りの時の祭礼などについてはいささか心得ておりますが、戦争のことについてはとんと知識がございません」と断っている。当時の諸侯国間では互いに隙あらば領土拡張をと虎視眈眈とねらいあっていたのを孔子はなんとか争いのない平和な世をと、それだけを願いつつ結局その願いも空しく世相は反対の野心渦巻く戦乱の世へと駆け降りて行くのであった。
 そんな時代から数千年も経て、第一次・第二次の世界大戦で数千万の死者を出す愚かを演じ、尚もこの地球のどこかで争いが絶えない。その点では人類の進歩向上はとても感じられない。

論語普及会会長 村下 好伴

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