今月のことば (2014年6月)
子、子産を謂う。君子の道四有り。其の己を行うや恭、其の上に事うるや敬、其の民を養うや惠、其の民を使うや義。( 公冶長第五)
子、謂子産。有君子之道四焉。其行己也恭、其事上也敬、其養民也恵、其使民也義。(公冶長第五・仮名論語・五六頁)
〔注釈〕孔子が、当時名宰相と言われた鄭の国の子産を評して次のように言われた。「君子が政治を行うために四つの道が有る。自分が他の人に対する態度はうやうやしく、上司や目上の人に対しては敬いの心を持って接し、人民を養うには惠み深く、人民を使役する時は農閑期などを選び、できるだけ人民の生活に負担支障をきたさないように配慮し、正しく使うべきで、子産はこれらに細心の注意を拂って立派な政治を行った。」
 子産についてはこんな話がある。
 彼が初めて宰相に就いて、己の信念に従ってどんどん新しい施政を推進していったが、当初は人民から反感と怨嗟の的となり、「誰か子産を殺す者はいないか、いたらそれに加担しようものを」とまで云われていたが、それが数年経つと、人民の声は「我々の暮らしをこんなに幸せにしてくれたのは子産さまのお陰である」、といつの間にか礼讃と感謝の声に変っていった。
 安岡先生は「己が信ずる立派な政治を行おうとすると、利己的放縦な民衆や、私利私欲を恣にしようとする勢力と必らずぶつかる。そして次第に反対の声が起り、圧力・脅迫行動・暴力行動などが続出し、大ていの政治家はこれに参ってしまう」と述べておられる。このことは戦後の日本の政治を振り返って見るとうなづけることが多々あった。
 特に左翼の偏向イデオロギー集団が、労働者を煽動して暴れ回ったのを思い出す。
 論語に「民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず」(仮名論語一〇三頁)とあるが、つくづく全国民に真意を伝える困難を痛感する。そして孔子が子路に対して政治の要点を教えて「倦むこと無かれ」と言っておる。なにごとも石の上にも三年か。

論語普及会会長 村下 好伴

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