今月のことば (2014年2月)
曾子曰わく、終を慎み遠きを追えば、民の徳厚きに歸す。
曾子曰、慎終追遠、民徳歸厚矣。
(学而第一・仮名論語・五頁)
〔注釈〕曾子が言った、上に立つ人が人生の終わりである死をおろそかにせず、すなわち葬儀は誠を尽くして行い、また先祖の祭りを手厚くして人情の真を尽くせば、人民もそれに感化されて自然と人情風俗が厚くなっていくものだ。(新釈漢文大系「論語」吉田賢抗著より)

 未だ祖国に還れぬ遺骨たち
 自民党は先の太平洋戦争の激戦地などで亡くなられた戦没者の遺骨収集を促進するための新たな法案を国の責務として国会に提出する方針であると報じられている。
 国内外の戦没者は約二百四十万人で未だ未収容のご遺骨は約百十二万柱あるそうだ。それらはほとんど雨ざらし日ざらしのままで破損風化が案じられる。遺骨のご帰還を待つご遺族も親御さんは勿論ご兄弟でさえすでに後期高齢者である。せめて遺骨をお祀りしてと待ち望みつつそれさえ叶わずお亡くなりになるご遺族がどんどん増えて来ている。それらの方々がせめてあの世で再会を果されることを祈るばかりである。
 戦中戦後の悲惨とも云える国の失態を知る者にとって、今日の安寧豊穣の世に生きることが余りにも有難くそんな世をも知らず若くして逝った諸先輩に対し勿体なく申し訳なくさえ感じる。それを思えば思うほどより鄭重により手厚く国を挙げて奉祀しなければ真の民風民徳の厚きに歸することは覚束ない。
 冒頭に掲げた曾子の言は、孔門の孝弟第一人者の言として千古の真言である。 年末に安倍首相が靖国神社に参拝された。当然近隣諸国の批判を覚悟の上でのことと察すると共に、その勇断に満腔の敬意を表したい。
 〝楽只の君子は民の父母”。その父母として取るべき態度を遺憾なく発揮して国威を発揚されたい。それでこそ戦後レジームの払拭である。

論語普及会会長 村下 好伴

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