今月のことば (2013年7月)
追 悼
 去る五月十六日、台北の楊喜松先生がご逝去された。享年九十三歳でした。
 安岡 学に私淑する関西に於ける同学の士によって台北孔子廟の釋奠参拝旅行をはじめたのは昭和五十年からであったように思う。
 抑々この行事の動機は、日本政府がそれまで交友を続けてきた台湾の中華民国政府と手を切ってまで中共政権と国交を樹立した、その背信行為に対する義憤から「それならば我々民間によって交流を続けようではないか」と云うことで、各々個人的には民間外交使節のつもりで参加したのであった。
 以来今日まで毎年九月二十八日台北の孔子祭に合せて参拝団を組み、一度も欠かすことなく続いている行事であります。
 孔子第七十七代直裔ご子孫孔徳成先生をはじめ台湾の儒 関係要人との交流に際し、楊先生は常に陰となり日なたとなって両者の親睦に心をくだいて下さったのでありました。
 先生は耳鼻咽喉科医として長年仁術を尽される傍、儒学・中国歴史、特に中国各民族の原流や日本の大和民族の原流に至るまで、深い関心を寄せられその博識によって「紀元前の中国人」等の貴重な著書を遺され、我々に大きな示唆を與えられました。なにより先生の控えめな謙譲の美徳は後生の者にとっての鑑として心に刻むところであります。
 ここに慎しんでご冥福をお祈り申し上げる次第であります。

論語普及会会長 村下 好伴

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