今月のことば (2013年4月)
子曰わく、道に志し、徳に據り、仁に依り、藝に游ぶ
(述而第七)
子曰、志於道、據於 、依於仁、游於藝 (述而第七 仮名論語八十一頁)
〔注釈〕人としての正しい道を歩もうと志し、それを実践する を本とし、仁の心を依り所として離さず、成人して世を渡る上に必要ないろいろの技能・技術・技芸を身につけ、それに熱中するような自分でありたい。

 三月五日は啓蟄「虫穴を出ず」又「蛇穴を出ず」とも、三寒四温の語があるように冬でも時に寒さの緩む時があるものだが、年初来あまり温暖の気を覚えぬまま啓蟄を迎えた感がする。それどころか三月に入って猛寒波猛吹雪に見舞われ、北海道では九人もの犠牲者が出ている。痛ましいかぎりだ。
 啓蟄の大地へみどり児立ち初むる
 第二次安倍晋三政権が発足して、就任早々から高い支持率を得ている。しかも就任早々の所謂ご祝儀相場に非ざる証拠にその後の世論調査でも上乗せされて続進している。三年余の民主党政権下で国民は経済・教育・国防の各分野において一抹の不安を抱いてきたことは確かだ。それになにより第一次安倍政権の時は病気退陣とは云え余りに短命政権に終った。それでもその短期間に教育基本法改正や防衛庁を省に昇格、新憲法制定に必要な国民投票法案等国の根幹に関わる法案を成立させた。
 心身共にリフレッシュした第二次政権の思い切った施政を望むや切である。
 今も連日報道される東日本大震災の復興状況は其の後二年経ってもまだまだ遅々として進んでいないようだが、復興が長引けば色々の面に影響が出て、国力そのものの減退をきたしかねない。早急な対策が望まれる。
 なんと言っても現政権に最も期待されるのは、教育の早急なる改善である。政府の「教育再生実行会議」なるものが「道徳の教科化(正科として検定済み教科書を使用し、成績を点数で評価する)」を提言した。
 「人間としてどう生きるかの座標軸として不可欠」「抽象的道徳教育ではなく、国が明確な道徳的価値観を示すことが重要」と提言している。 
 戦前の小中学校教育を受けた我々にとっては極く当り前のことであり「今ごろなにを…」との感がするが、「価値観の押付け」とか「軍国主義の助長」などと所謂進歩的文化人と称される曲学阿世の学識者によって人間の根幹的教育が歪められて来たのである。
 日々東北の現況がテレビに映し出されるが、進まぬ復興の中で、常々ほっとさせられるのは悲惨な目に会いつつも、悲しみを分ち合い、足らざるを補い合うあの姿こそ日本人本来の姿であり、苦境の時にこそ情・礼・仁などのDNAを遺憾なく発揮した。本来の日本人に目覚めるべく現政権下において迅速な「道徳教育」の正科導入を実現されたい。

論語普及会会長 村下 好伴

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