今月のことば (2010年6月) |
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子貢、政を問う。子曰わく、食を足し兵を足し、民之を信にす。−(中略)− 曰わく、食を去らん。古自り皆死有り、民、信無くんば立たず。(顔淵第十二)
〔注釈〕弟子の子貢が政治を行う上で特に心がけるべき要点はなんでしょうか、と孔子に問うた。孔子は食糧の確保、自衛のための国軍の充実、それに人民に政府を信頼させることだ、と答えた。子貢が更にその中で一番大切なものはどれですか、と問うと、孔子は、そりゃあ人民に政府を信頼させることだよ、と答えた。つまり国を治めるためには爲政者と人民の信頼無くては成り立たぬ、と云ったのである。
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民に『信』を得ぬ政治はなり立たぬ
日本の政治史上今日ほど国民から不信を抱かせる政権もめずらしい。
目先の利益をちらつかせ、実に耳ざわりの良いマニフェストを掲げて政権を握ったが、早や党内からさえ財源の裏付け無き政策に異論が出始め、見直しが囁かれだした。
沖縄の米軍普天間基地移設問題では全く四面楚歌の状態で先が見えず、首相の五月末決着は遂に見送られてしまった。
この間の首相発言は「最低でも県外」と言っておったのが二転三転四転し、迷走ぶりに不安感が募り、国民に全く信を失ってしまった。米大統領オバマに対し「私を信じて」と云って帰国したが未だにこの態たらく、アメリカの各界からは呆れを通り越して軽蔑の声さえ聞こえ、マスコミに至っては『ルーピー』と揶揄されるに至っている。呻吟語に―士君子一たび口より出せば反悔の言無し。一たび手を動かせば、更改の事無し。之を思いに誠にするが故なり。―とあるが、反悔し更改の連続ではないか。日本人は『恥の文化』といわれ、武士道をはじめ最も恥を知る民族として世界から敬仰されていたのに、国辱である。軍備増強に余念がなく、特に海洋権益獲得のため海軍力を急速に強化してきている中国の脅威に対し、四面海に囲まれたわが国の防衛力は一向に顧みられる気配がない。そんななかで一体日米同盟をどう考えているのか。もし今これまでの両国の固い絆にひびが入るようなことになったら忽ち国民は夜もおちおち寝られぬようになってしまうのではないか。日米等距離関係構築を目指すは理想としては結構だが、しかしそれはあくまで軍事大国たる隣国と対峙でき得る自衛力を備えて後のことである。
現政権の外交姿勢を見ると、アメリカに対しては六十年の同盟関係に馴れ切って、守ってくれるのが当たり前と思って甘えているのか。それとも腹に一物を持ってわざと阻隔的態度をとるのか?一方中国に対しての姿勢は、どうも媚態迎合妥協が過ぎる。例えば東支那海共同開発ガス田の交渉問題でも、日本が出資した掘削施設での双方の権益比率が五対五であったものを、遂に向こう側に五割超の権益を与えてしまうようである。しかもその地下構造では日本側領内と繋がっており、いっしょに吸い取られる可能性があるそうだ。その他日本領海内でのトラブルに対しては洵に腰の引けた態度が目立つ。それに国内では外国人への参政権付与法案を上提しようとしている。はじめの中は、何十年も日本に定住している在日韓国人向けに考えられた法案だが、もし成立したら、文字通り中国人の大量流入を来すであろう。なにから見ても甘っちょろ過ぎるお坊ちゃま政策と映る。対する隣国は何千年来易性革命で鍛え抜かれた老練老熟な老大国たるを忘れてはならぬ。それこそガス田どころか、国もろ共呑み込まれてしまいかねない。
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