今月のことば (2010年1月)
憤を發しては食を忘れ、樂しんでは以て憂を忘れ、老の將に至らんとするを知らざるのみと。(述而第七)
両忘憤起の年に

皇紀二千六百七十年、平成二十二年の新春を皇国に生を享けし我ら、共に寿ぎ得ます身の幸を心より感謝致し、賀し奉ります。

顧みますれば、昨年は本会諸活動の一層飛躍活発化を期して出発、どうやら所期の目標に近付き得たように感じております。

一つは、十一月十四〜十五日に箕面明徳庵で開催しました「第十二回論語温習会」には各地の論語塾主や主催者が全国から参集され、『教うるは学ぶの半ばなり』との基本理念に戻り、己が人と成るべく大いに研鑽に励み、合わせて塾の持つ問題点や、これからの抱負などを相互に出し合い、横の連絡を取り合って行くことを誓い、大へん熱気の籠もった有意義な研修会となりました。

論語塾と云えば、最近各地に簇生しておりまして、尚新規開塾希望者の問合せや、テキスト用に仮名論語の注文などが頻繁に参るようになっております。このような創会時には想像もできなかった論語ブームの風が吹いており、頼もしい限りであります。今年は本会がその拠点としての役割の重要性を肝に銘じ、更なる教材の拡充、講師陣の増員などを図り、凡ゆる面に即応出来る所謂『論語センター』としての重責を果たす所存です。

実はこのブーム、わが国のみに非ず、隣国中国で今一大ブームを巻き起こしております。小学生に論語の素読が義務付けられ、論語や孔子の伝記などが一大ベストセラーとなり、各種のイベントに孔子が出て参ります。おそらく上海万博でも孔子関係のエリアが相当占めるのではないでしょうか。それに中国映画社の自主作品『孔子』がやがて封切られるようです。そんなことで今孔子の故郷曲阜は賑わいに湧き返っておりまして、十数年前の静閑な曲阜の情景はも早や過去のものとなっております。

最近テレビ等で中国の若者や中堅企業人のインタビューを聞いておりますと、未曽有の経済発展を背景に目をキラキラ輝かせ、活々として希望に燃えた姿がやたら目に付きます。そして彼らは何でも世界一を目指すんだ、世界一の大国になるのだと公言して憚りません。まるで日本人の明治維新以来、昭和の敗戦に至るまでの希望に溢れた姿を彷彿させるものが有ります。大へん頼もしい情景ですが、只一つ、突出した軍備の拡張だけは困りものです。近隣諸国にとっては、すわっ覇権の野望の現れか、と訝り脅威を感ぜざるを得ません。いかなる発展も平和を基盤にしなければ恒久とはなり得ません。なんとしても義や信や禮や孝の孔子の平和精神を心に体し、単に人の数や物質の大国ではなく、倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る、真の国家として発展されますことを切望して已みません。日本は今倉廩充ち、衣食足り過ぎているのに、いよいよ礼節も栄辱も忘れ去られ、世相紊乱頽廃堕落し、狂人沙汰としか思えぬ言語に絶する凶悪犯罪が日常茶飯事として報道されています。

両国共に今こそ論語の時です。韓国・台湾共々東洋思想の根源たる論語の先進国が確り手を携え、孔子が夢に描いた平らかなる世界の実現に向け発憤興起し、年頭意気を新たにしましょう。

Copyright:(C) 2012 Rongo-Fukyukai. All Rights Reserved.