今月のことば (2009年11月)
己を脩めて以て百姓を安んずるは、堯・舜も其れ猶諸を病めり。(憲問第十四)

【注釈】 一、天命―宇宙絶対の働き。二、大人―先輩長者で有徳の人。三、聖人の言―論語や聖書の如き万世の法則を説いた言。君子は、この三を畏れ、小人は畏れず侮る。
我らの先祖のみ霊を穢すな

今春皇居の勤労奉仕に参加し、宮中三殿を拝させていただいた。天皇陛下はここで主立ったお祭りだけでも年に三十数回祭祀が行われ、その都度祭服をお召しになり、早朝から古式に則り祈りをお捧げになっておられるとのこと。今上陛下は殊に祭祀を重要視しておられると洩れ承る。その中でも秋は実りの季節、最も重要な神嘗祭・新嘗祭が行われ、人間の生命の根元たる瑞穂に対し感謝の誠をお捧げになる。皇室は祷の存在と承る。我ら日本人の大宅たる天皇家は、日本国開闢以来日本独自の神道によって祖先諸神をお祭りされ、国と民の安泰をお祷り下さっているのである。


最近は毎年数回伊勢参宮の機会を得ているが、二十年に一度お遷りになる遷宮地には、奥の中央に低く小さい小屋のようなものがある。これこそ『心のみ柱』の鎮座在します所で、日本人の魂の由りしろである。四年後には御遷宮になり、今ご造営の槌音が高らかに響いている。

どんなに人間が進化し機械科学文明が発達し、宇宙に居住する時代が来ても、地球上は不安材料が溢れている。例えば、もう数十年も前に安岡大師が警鐘を鳴らしておられた地球温暖化による北極の氷が溶ける不安が今や現実の問題となり、文字通り人類滅亡の危機到来を予感させるではないか。このようなことに真剣に取り組まずして宇宙へ行ってなにになろう。人間至上主義の傲慢不遜な考え方を改め、天命を畏れ、聖人の言を畏れ、謙虚な心を取り戻し、大自然の神々に真剣に熱祷を捧げねば人類は救われない。


三百八議席の巨大な権力を背景に鳩山政権が発足した。首相は「靖国神社に参らぬ」と明言し、誰もが参拝出来る無宗教の新施設を検討すると表明した。慰霊施設とは名の通り、死者の魂魄・み霊の由りしろである。靖国に眠る英霊たちは皆、生まれると先ずお宮参りをし、幼い頃は氏神様の鎮守の森で虫取りなどして遊び、お祭りには境内の縁日を楽しみ、七五三や進学、結婚など人生の節目は全て神社にお参りして育った。つまり神道に始まり神道に終わった方々のみ霊である。筆者の兄は海軍で従軍し、外泊休暇で三日間帰宅してのち再び任地に戻る時、汽車の最後尾のデッキから手を振り「今度遇うのは靖国だぞー」と叫びつつ征き、サイパンで玉砕した。ほとんどが戦友同志で「靖国で遇おう」と誓い合って華々しく散って逝ったのである。

首相よ、このみ霊たちの叫びに心耳を傾けよ。このような諸霊がどんな新施設が出来てもお遷りになろうはずがない。外国の批判に気がねしたり、ご自分が晴れてお参り出来ても、そこは魂魄・御霊無き虚の建物に手を合わせることになるであろう。新施設とは御霊を踏みにじる最も忌むべき非人間的行為であり天命を畏れぬ傲慢不遜の発言である。現世の人間がご都合で左右するような問題では無い。靖国神社を否定することは、日本精神の根元たる神道を否定することであり、神道を否定することは畏れ多くも祭祀をお続けになる皇室の否定であり、皇室の否定は国家滅亡を意味する。


日本人よ、神道を忘るることなかれ。忘れぬかぎり常に世界の先頭にあるであろう。
(アーノルド・トインビー「日本の活路」

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