今月のことば (2009年7月)
子曰わく、徳は孤ならず、必ず鄰有り。(里仁第四)

〔注釈〕 孔子が言われた。「報いを求めず、陰徳を積んでいる者は、決して一人ぼっちではない。必ず思わぬところにこれを知る者がいるものだ。」(仮名論語頭注から)
徳と仁で太平洋の保全と発展を

今月二十日は”海の日”再び海に思いをよせて・・・。

去る五月二十二日から北海道の占冠村に於いて第五回「日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議」(太平洋島サミット)が開かれたと報じられた。太平洋の島嶼国が抱える深刻な問題の、温暖化による海水面の上昇、ゴミ投棄による環境汚染などが話し合われ、「太平洋環境共同体」文書が採択されたとある。日本はこれらの支援費用として三年間に総額五百億円の拠出を表明した。日本にとっても直面する切実な問題であり当然の対策である。また十四日には、笹川平和財団主催の「島嶼国の海洋環境保全保護を考えるシンポジウム」が開かれている。一方中国も平成十八年に独自で「中国・太平洋島嶼国経済発展協力フォーラム」を開き三年間で三十億元(約四百二十億円)の優遇融資を表明したそうだ。本紙四月号の今月のことばで「海こそ日本の未来」と題し、その中で中国の海軍力の増大を述べたが、島嶼国に対しても影響力を及ぼそうとしているのである。愈々中国の海への進出が本格化してきた。

実はこれら多くの島嶼国は、戦前日本が委任統治したことがあり、今でも多くの日系人が住んでおり、親日家が多い。台湾をはじめとして東南アジア諸国でも言えることで、日本に好感を持っておる人が非常に多い。このことは何を意味しているか。進出して行った我らの先人たちがいかに陰徳を積み仁政を施したかのなによりの証拠ではないか。敗戦による占領政策によって一方的に日本悪者の烙印を押され、純情な日本人は東京裁判史観に毒されて、我々祖国の者をひたすら守ろうとして散っていった先祖まで悪者扱いするような自虐史観に染められてしまった。真実はいずれ歴史が証してゆくことだろうが、前述の如く、欧米人が執った搾取的植民地政策とは異なり、現地に融け込み共生を計って感謝されておる日本人が多く居たことは事実である。

話をもとに戻すが、今環太平洋の諸国が、太平洋とそこに浮かぶ島嶼国に大きく注目をして来ている。将来を見据えて人類が生存するために次はどうしても海の資源開発が不可欠であるからだ。先師安岡先生はそのことをよく話しておられた。「海には凡そ有らゆる資源が無尽蔵に眠っている」と。今や文字通り現実味をおびてきたのである。徒に宇宙にばかり目を向けるのでなく、四面海に囲まれた日本こそ太平洋の盟主として海の開発に本気で取り組むべきである。そのためにより高度な探査船の複数の建造なども考慮すべき時ではないか。島嶼国に対しては金や物で交わるだけでなく、先人が遺してくれた遺徳の上に我らまた徳を積み重ね、先祖を辱めることなく、島嶼国の人々と一志同仁、太平洋の保持発展に尽くさねばならぬ時である。

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