今月のことば (2009年4月)
子曰わく、道行われず、桴に乗りて海に浮ばん。(公冶長第五)
海こそ日本の未来

孔子が、時世の紊乱、道義の頽廃を慨嘆するのあまり、いっそ東海に舟を浮かべ、どこかの島へ亡命してしまおうか、と云ったところだ。果たして孔子は海を見たことが有るだろうか〜どうもその形迹は見当たらない。今でこそ青島からバスで四〜五時間で曲阜まで行けるようになったが、あの頃は道も悪く、早い交通手段といえば馬車ぐらいで、隣の斉の国へ行っても亡命と見なされる時代である。そんな時代に黄海や東シナ海まで出るだけでもたいへんである。それに古来自国を最も進んだ文化国家と自負して、自ら中華と呼び、四囲を南蛮北狄東夷西戎と蔑視し、これら蛮族の侵入を阻止することに汲々とし、自国内の楽園化、安定化に意を注いだのが中華民族であって、海洋ということには余り関心を持っていなかったように見受けられる。

それが近年俄然海洋へ目を向けて来た。特に人口増と国力発展に伴い、東海の資源に目をつけ、急速に海洋開発力、海軍力増強を計り出した。軍事予算は年々膨張し、その多くが海軍力増強に費やされている。潜水艦が日本近海を横行しているのは先刻周知のこと、近いうちに自前の航空母艦建造に着手すると表明している。東シナ海のガス油田群は自国海域内と主張し、我が国との共同開発提案など一笑に付し、尖閣諸島まで中国領と主張する。韓国は竹島を強引に基地化し、独島と呼んで自国領へと既成事実化を進め、日本海を東海へ呼称変更せよと世界にアピールしたり、最近島民の減った対馬へ大量に韓国観光客が上陸し、島を無秩序に荒らしまわり、韓国の不動産屋が島の土地を買収し、「対馬は韓国領」と暴言を吐いたりしているそうだ。対馬は日本海の喉仏であり、さすがに日本政府も遅ればせながらやっと対馬への自衛隊基地強化及び島の振興策を計ることを表明した。しかし一方の竹島については、先日島根県主催の「竹島の日」には国会議員が一人も出席しなかったと云う。北方四島も露西亜の巧妙な硬軟自在の外交戦術に翻弄され、領有の違法を認めさせることができない。


四方の海みなはらからと思ひしに
          など波風の立ち騒ぐらん


且つて七つの海を股にかけて雄飛した海洋国日本は、も早や海洋国中国に取って替わられつつある。

四面海に囲まれた日本は古来海の恵みによって生かされて来た。陸地面積の少ないこの国にとって、凡ゆる豊かな資源をほぼ無尽蔵に包蔵する海こそが、将来日本民族の生存に欠かすことのできぬ宝庫である。周囲に点在するどんな微細な島々も日本の守りの最前線である。日米安保条約に頼り切って過ごし平和呆けした日本人の精神的負債は大きい。今こそ国民の意識を喚起し、国防への関心を高め、一丸となり毅然たる国防への気概を周辺諸国に示す時である。

水は低きに向かって流れる、日本人の精神的沈下は非常に大きい。今埋め直さねば、周辺諸国の怒涛に呑み込まれて日本沈没の憂き目を見ない保障は無い。

『海洋国日本』の威信を一日も早く取り戻そう。

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