今月のことば (2007年2月)
子、子産を謂う。君子の道四有り。其の己を行うや恭。其の上に事うるや敬。其の民を養うや恵。その民を使うや義。(公治長第五)
これは孔子が若い頃大いに敬仰し、少なからず影響を受けたといわれる鄭の名宰相・子産の人柄を賞揚した孔子の言葉である。
「私が尊敬して止まない子産さまは、四つの特質を備えた人だ。一、日常の言動はとても謙虚で恭しくしておられる。二、君主や長老たちに対しては深い尊敬の念をもってお事えなさる。三、人民を愛し、恵み深い施策を構じられる。四、人民を公 事業などに徴用する時は農繁期など人民の生活に支障をきたすような時期を避けて閑期に用いられた。」
なるほど宰相として余すところなき資質、品格、気配りの備わった人だったことが知れる。
子産が鄭の宰相に就任して一年目は、利己的で目先のことしか考えない人民は「誰かあの子産を殺す者がいたら俺も共にやるぞ」と怨み言を言っていたのが、三年目には「子供は教育してくれるし、豊かで幸せに暮らせるようにしてくれた。もし彼が居なくなったら、誰もこんな有難い政治を嗣ぐ者はいないだろう」と礼讃と感謝の言に変わったという。子産が亡くなった時、孔子は泣いたと言われる。いかに敬仰していたかが偲ばれる。

昨年九月首相の座を降りられた小泉前首相、その五年間を振り返ってみて、一番の功績はなんと言っても靖国神社の参拝を曲りなりにも貫き通したことであろう。これによって、六十一年前占領軍が「二度と立ち上がることが出来ないように」と実施された日本人の精神的骨抜き。武装解除の諸施策、その呪縛を漸く解き放ち、日本人本来の性根を呼び醒すきっかけを與えた。米百俵の古事引用から始まり、施政方針演説などに論語の文言を多用し、日本人のDNAに訴え続けられたことは多とすべきであろう。
そのような下地もあって、教育再生を最重要課題と位置付けて就任された安倍新首相は、長年の懸案であり、心ある国民の待ちに待った教育基本法の改正(満点とは言えないが)。
自国の防衛を、利害関係がちょっと崩れればソッポを向かれるであろうアメリカ様におんぶにだっこしてもらって来たものを、やっと防衛庁から省への昇格。僅か四ヶ月たらずですんなり可決成立させた。次は占領憲法を廃し、日本人独自の自主憲法制定に向け全力を尽すべき時である。
負けたり勝ったり、取ったり取られたりの歴史をくり返し、国の治乱興亡に経験豊かな西欧の識者は「日本が精神的復興を遂げるには五十年百年を要するだろう」と云ってくれているそうで洵に慧眼なり、と真摯に受け止め、覚悟を決めて何十年かかろうとこの穢国悪世を王道楽土に戻して次代の子孫へ引継がさねばならぬ。そのスタート台に着いたのが今年であると云えよう。
早速新首相の足を引っ張ろうとたくらむ曲学阿世のマスコミ共が、ごく僅かの支持率低下をさも一大事の如く喧伝し、あらさがしに懸命のようだが、虻の耳鳴りと聞き流し、至誠以って信念を貫き通していただきたい。
首相の尊敬する吉田松陰や、孔子が敬仰して止まなかった鄭の子産も、いずれも無責任な輿論に動じなかった人々である。
そしてその証は結局靖国神社の春秋例大祭への参拝であろう。それは、常に御軫念あそばされている天皇陛下の御親拝への道筋となるのであるから。

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